本を読む本/M.J.アドラー、C.V.ドーレン

読書の意味、種類、レベル(段階)について書かれた本。

テレビやラジオ、雑誌等のメディアから知識を得る事が多くなっている現代だが、それらは積極的な姿勢が求められる読書と違って多くの場合が受身だ。考える作業をメディアが代行しているためか、人々が自分で考え、判断する必要がなくなっているという。本書では、ただ活字を追って知識を得る読書よりも、理解を深め自ら考える読書について重きを置いている。

より高い読書術を身に付ける段階として、「初級読書」、「点検読書」、「分析読書」、「シントピカル読書」が挙げられる。

「初級読書」では述べられている内容が理解できること。「点検読書」では決められた時間内に内容を理解することが求められるため、正確な拾い読みが必要となる。徹底的な読込みが必要なる「分析読書」が第三段階で、自分が発見した主題に基づいた関連本を何冊も読んで分析するのが「シントピカル読書」だ。

その中で、多くのページが割かれているのが第三レベルの「分析読書」。

読んでいる本の分類、またその骨格・構造、そして著者の意図を理解するための読書技術が述べられているが、各項目の中でもさらに段階が細分化されており、いつの間にかそれらを自分に照らし合わせ、自分自身の読書を再点検していることに気付く。

概ね、学問に活かせる読書術だが、終盤では文学作品を読む事の難しさにも触れている。

「物語が心にはたらきかけるにまかせ、またそれに応じて心が動かされるままにしておかなくてはいけない。」

文学等は読む目的が異なるため、積極的に学ぶための読書とはまた違い、前述した読書術の応用が必要となる。

最後に「シントピカル読書」についての章となるが、これはより高い学問を追及・研究するための読書術であり、大学も終えて社会人生活を何年も送り、その過程で娯楽小説をより好んで読むようになってしまった今の私には過ぎたる指南となっている。

時には難解な本を読んで精神を成長させよ。

著者の締めくくりにはそんなメッセージが込められており、大きくうなずいて見た。楽な本からは得る事は少ないという事だ。

読了:2007年3月