天狗争乱/吉村昭

過激な攘夷論者たちの間で最も過激といわれた水戸藩。その中に苛烈を極めた武装集団がいた。天狗党。

彼らは筑波山で挙兵し、例幣使道を通り日光東照宮を目指した。栃木町、宇都宮、鹿沼、今市などを通るが、彼らは行く先々で住民たちから恐れられ、また時には地元住民から圧力を受けるなどして、厄介者の印象が拭えない。 続きを読む

落日の宴/吉村昭

外圧が高まる幕末にロシア、アメリカなどの列強との外交に辣腕を振るった勘定奉行・川路聖謨の生涯を描いた小説。

川路とロシア使節プチャーチンは北方領土の国境問題をめぐり一進一退の交渉を続けた。詳細な事実を収集し、交渉時の裏付けをとるが、プチャーチンも様々な見地から弁論し一歩も譲らなかった。一座は緊迫し何度も交渉が中断された。何やらただならぬ雰囲気が読者に伝わってくるが、同時に日露両国間による心の交流も描かれており、時折微笑ましくさせる。 続きを読む