水戸学を学び攘夷思想に目覚めた水戸藩士は、開国派の大老・井伊直弼と激しく対立していた。大老暗殺を企てた水戸藩士を話の軸に事件の全容が描かれている。
以下、私が読中最も緊迫感を抱いたくだりを簡単に要約・紹介する。
安政七年 (1860) 三月三日、水戸藩士・関鉄之介以下十七名は、大名行列と共に江戸城に入城する大老、井伊直弼を暗殺すべく桜田門外に集結した。この日のために練りに練った作戦は成功するのだろうか。鉄之介の神経は極度の緊張感の中で昂ぶっていた。行列の見物人を装う首謀者たち。武鑑を見るもの、おでんを片手に口を動かす者、盃を傾け口元へ運ぶ者。
眼光だけは鋭かったであろう。
やがて一発の銃声と共に大老の駕籠に斬りかかる。この日の江戸は雪だった。警護の者達は湿気を恐れ刀の柄に袋をかぶせていた。
ここに捨て身の水戸藩士との戦闘意識の差が歴然と表れる。
読了:1999年 6月
水戸市、回天神社の「関鉄之介の墓」
国事に殉じた水戸藩士が祀られているだけあって扱いが大きめだ。
水戸藩所縁の弘道館。館内には藤田東湖、武田耕雲斎、徳川斉昭、徳川慶喜などの肖像画を始め多くの資料が展示されている。水戸藩主体の小説を読んでここを訪れると感慨深い。
余談ながら、本書を原作とした映画が2010年10月16日に全国ロードショーとなった。主人公の関鉄之介役には大沢たかお氏。
写真は水戸市千波町のオープンロケセット。写真奥に見える彦根藩邸から手前の桜田門へ向かう途中が襲撃現場だ。当時の様子をしみじみと想像してみた。
彦根藩邸付近から桜田門を望む。