黄巾の乱から漢王朝の崩壊、そして三国鼎立時代から晋の建国までを描いた小説。
一言で三国志といっても文献は様々だ。主に曹操を主人公にした「三国正史」。あるいは曹操を悪玉とし、どこまでも劉備を主人公に仕立て上げたがる講談仕立ての「三国志演義」などが代表的だろう。日本では、吉川英治の「三国志」などが有名どころか。
しかし、本書は前述したもののどれでもなかった。あえて物語の主人公を挙げるとすれば、少容という五斗米道信者であろうか。当時の宗教家たちは英雄たちに重宝がられた。各国を渡り歩き天下の情勢に詳しい情報通だったからだろう。おそらく著者は、この少容を通じて自分の史観を表現していたに違いない。
読了: 2001年 5月