舞台は鎌倉幕府崩壊後の東北地方。北条の残党らを抑え、奥州を平定すべく陸奥守に任命されたのが本書の主人公、北畠顕家だ。この時、若干16歳。
父・北畠親房の教育により高度な学問を身につけた顕家だったが、陸奥守就任後は武人としての活躍がほとんどだ。時に上洛し、尊氏を始めとする足利勢を何度と無く打ち破り、一度は九州にまで追いやった。経験や軍学を超えた天賦のものが、顕家には備わっていた。彼の人生を象徴すべく、本書には数多くの戦闘が描かれているが、著者は騎馬隊の戦を描くのが得意のようだ。
しかし、作品全体を考えた場合、話の流れを掴むのが若干難しい。南北朝ものには馴染みが無いからだ。そこであらすじを掴む上で抑えておきたい人物を挙げてみたい。まずは敵方。主人公に立ちはだかるのは足利尊氏、直義兄弟や、足利一門の有力武将、斯波家長。そして高一族などが挙げられる。
そして南朝、北畠顕家側では伊達行朝、南部師行、結城宗広や遠藤忠村など。他には楠木正成や新田義貞も登場する。また、顕家と安家一族との交流にも注目したい。
敵も味方も、その性格は著者が描く人物らしくほとんどがハードボイルドだ。登場人物が皆同じだという見方も出来るが、それでも彼らの会話の裏側に読み取れる男のカッコ良さを求め、そしてそれを噛み締めたい。
読了: 2004年2月
顕家が祀られている福島県伊達市の霊山神社。ここまで登る石段が思ったよりしんどい。足がガクガクです。荒れた呼吸が響きそうなくらい閑散とした境内。
ここから石段が続く