柳生非情剣/隆慶一郎

チャンバラ小説。もともとチャンバラ小説はあまり読まないが、隆慶一郎が書いた本ならそれなりに面白いだろうと思い読んでみた。いくつかの章にストーリーが分かれており、その中からとくに印象に残ったものをいくつかを紹介したい。

子供にいじめられる不敏な呆け老人、「あほの太平」が登場する章、「柳生の鬼」では、その「あほの太平」の実体に驚かされ、また、足の自由を無くした柳生新次郎のやりきれない心情を描いた章、「跛行の剣」を読んだ時には、心が掻き毟られた。

同じく著者のチャンバラ小説である、「鬼麿斬人剣」と比べても、やはり「柳生非情剣」のほうが面白いと思う。独断と偏見で。「鬼麿」には私が隆慶一郎の作品に求めているものがなかった。「鬼麿」と「非情剣」の中間くらいに面白いのが、「吉原御免状」だろうか。やはり独断と偏見で。「吉原御免状」の中には、明智光秀=南光坊天海説や、徳川家康影武者説などが盛り込まれており、その内容は興味深い。

読了:1997年 11月