風の呪殺陣/隆慶一郎

信長による比叡山焼き討ちが一人の修行僧の運命を変えた。

叡山の寺を焼かれたことにより修行の道を断たれた昇運。仏敵信長を呪い殺さんと呪殺行に入った。弱冠十八歳。過酷な青春を送る昇運に悲壮感が漂う。これを初めて読んだ時、私もまた10代後半で、おこがましくも主人公に感情移入してしまった。

「<わしの行場はここだ。悪鬼羅刹といわばいえ。わしはこの地獄谷で、地獄の修験道を、必ず必ず満行してみせるぞ>

朝焼けに、昇運の顔はまさに血を浴びたように赤かった。」本文より。

読了:1995年

余談だが、この昇運が呪殺行に入ったとされる立山の地獄谷。立山を旅行した時に観光案内の方に道順を聞いてみた。みくりが池の展望台から見下ろす事が出来るらしいが、周辺は火山ガスによる事故防止のため通行止めになっているとのことだった。辺りを見回しても峻険な山々。苛酷な環境なのだ。