戦場にかける橋/ピエール・ブール/関口英男 訳

第二次世界大戦、日本軍はクワイ河への架橋と隣国同士を結ぶ長距離鉄道を敷設すべく英軍捕虜たちを酷使していた。英軍捕虜に架橋を強要する日本軍と、工事の遅延や橋の爆破を目論む英軍捕虜たちとの対立、というのが本書の大筋だ。

架橋と鉄道敷設、いずれの工事に関しても日本軍と英軍捕虜たちはその方法を巡って激しく対立していた。工事方法に対してより科学的な手段をとろうとする英軍捕虜たちに対し、ヒステリックに無茶な労働を強要したのが日本軍だった。

しかし手段の違いによる対立よりも、むしろそれぞれのやり方にこだわる面子や体裁、お互いの誇り同士の衝突といったところが本書の本質のようだ。戦争という極限状態にあって、対立の中にも両者の精神の根底にあるものは同じである、と著者は言う。

本書は著者自らの捕虜体験を小説化したのものだというが、「小説化された」というだけあって事実は若干異なる。日本軍は本書で述べられているよりも劣悪な所もあったようだし、また敵軍に対し人間的な配慮を見せた所もあったようだ。

余談ながら、本書は映画化されている。私が見たのは「戦場にかける橋」の続編だった。確かサブタイトルが「Return from the River Kwai」だったと思う。多くの戦争映画でみられるように、日本人の悪役ぶりは健在だった。が、最も印象に残っている戦争映画の一つだ。

読了: 2002年11月