蒙古襲来/菊池道人

元寇に際し、幕府、宋、高麗に深く関わった竹崎(海原)四郎季光を描いた小説。

主人公・竹崎(海原)四郎季光が大海原での生活に生きがいを求めていたある日、刀商人源九郎と出会い、輸送船に乗り宋へ向った。高麗、宋を渡り歩いた季光は帰国後に厚待遇を受ける。モンゴルの東方進出に脅える幕府にとって季光の知識は国防上貴重な情報源だったのだ。

帰国後は敵情視察の密偵として再び宋へ渡った。たてまえは源九郎商人の使用人としてである。宋では後に「東方見聞禄」を著したヴェネチアの商人マルコ・ポーロに出会うが、このあたりはいかにも冒険小説的であり、マルコが各国を渡り歩いた話を聞かせるくだりは読んでいて飽きなかった。

しかし、源九郎がマルコに吹き込んだ日本についての情報がいささか大げさだったようだ。日本は黄金に溢れた国だというようなことを言ってしまったらしい。確かに当時の日本ではかなりの金が採れたようだが、市場に出回っていたわけではなく、ましてや民衆がそれで潤っていたわけでもなかった。マルコはそんなことを知らずに、「黄金の国・ジパング」と勝手に想像を膨らませてしまったようだった。源九郎大嘘つきである。元の皇帝フビライの相談役だったマルコはフビライにも同じようなことを言ってしまった。フビライは真に受ける事はしなかったようだが心は動いたであろう。それを考えるとフビライが日本を狙った理由には納得がいく。そして元軍は玄海灘を渡り日本侵略を試みた。が2度にわたる攻撃も暴風に妨げられ失敗。まともに戦っていたなら日本は簡単に負けていただろうが、元軍が勝手に撤退してしまったのだ。後世の人間が言う「神風」のおかげかどうかは知らないが、とにかく地の利が活きた。

竹崎(海原)四郎季光とは架空の人物らしいが、彼の活躍を通して各国の動きがうまくまとめられていたように思えた。主人公が架空の人物ということだけあって、物語の展開に幅があり読み応えを感じる一冊だった。

読了:2001年1月