前作、「武王の門」の続編。牧宮の子・月王丸と孫の竜王丸が登場する。彼らは南北に分かれた朝廷を一つにするべく奮闘するが、対するは三代将軍・足利義満。朝廷の権威を超え自ら帝となるのが彼の野望だった。
そして主人公は剣客として生きる来海頼冬。彼の祖父は足利尊氏というのが本書の設定だ。義満は血筋を巡った後難を考慮し、頼冬に刺客を送る。そのためか、本書には斬合いの描写が多い。
しかし、本書で興味深かったのは前述した月王丸・竜王丸親子と足利義満の争いだ。物語の終盤、月王丸が竜王丸と頼冬を伴い足利義満と面談するくだりがある。お互いの淡々とした対話の中には強烈な意思が飛び交い、危険だが、しかし小気味よい緊張感に私の鼓動は高鳴った。戦場で散らす火花よりも、むしろこんな両者の対面にこそ、私は熱い闘いを見た思いがする。
読了: 2004年3月