薩摩燃ゆ/安部龍太郎

幕末の薩摩藩が抱えていた膨大な借金。その財政改革のために奔走した調所笑左衛門広郷が主人公だ。

金策とは言え、そのほとんどが正当なものではなかった。心当たりのある貸主を回る程度ならばまだわかるのだが、密貿易、サトウキビ栽培の搾取、藩が抱える借金の踏み倒し、贋金造りなどにも手を染めた。

藩主にも、自分の家族にも、全てを公表するには穢れを背負い過ぎていた。

それなりの成果を挙げているにも関わらず、さらにそれ以上の結果を求められ続ける笑左衛門。彼の報告を受けている時の斉興の態度を思うと、笑左衛門が余りにも切ない。斉興に対する不信感を募らせたことだろう。15歳の時に茶坊主として仕えて以来慕ってきた先代藩主・重豪、また次期藩主としての呼び声高く、才気溢れる斉彬を間近で見てきた笑左衛門なのだ。

笑左衛門の心境はどうあれ、読者の心境としては斉興離れになってしまう。

財政の建て直しの他、軍備の近代化等にも貢献し後の維新の立役者となる薩摩藩の礎を築いた笑左衛門だったが、後継者争いで混沌とする内政状態の最中で自らの立場を鑑み、これまでの汚名を一身に背負ってその生涯を終えてしまう。

一体何が、彼をそこまで駆り立てたのだろうか。藩に仕えるというのはそれほど重い事なのか?藩の任命だったとはいえ、さらに、不正を黙殺し得る当時の状況だったとは言え、事が発覚し表沙汰となった時には自分が責任を取るしか方法が無い。彼の自害は藩の名声を守るための行動だったのだが、その覚悟があったからこそ不正を働く事にも耐えられたのだろう。

不正を推奨するつもりはないが、身の辺が綺麗過ぎる職務というのは重さもそれなりでしかないのかも知れない。

読了:2008年 12月